【第18話】うれしい報告

Mについて

Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で13年目。今まで400人以上の人の就労支援に携わっている。

 Oさんが最初に働けない理由にあげたのは、顔面のけいれん。目の周りがピクピク引きつると言い、面談中は両手で顔を何度も覆い隠す仕草をした。
 Mから、痛みはあるかと問うと、Oさんはそれほどないと言う。それなら一度精神科を受診してみてはと提案したが、通院はしなかった。

 最後の仕事は営業。営業職を勧めると営業の仕事はもうしたくないと返答。その前の仕事は倉庫内作業。倉庫の仕事を勧めると、その仕事で腰痛持ちになったから、力仕事は懲り懲りとのこと。

 月2回の面談は、こんなやり取りで一向に求人申込までは進まなかった。3か月後に今度は、おなかの具合が悪いようで、1時間の面談中に5,6回は面談を中座し、便所へと駆け込む。

 Mは専門医への受診を促したが、Oさんは内科も精神科もどこの科も受診しなかった。結局半年の月日が流れていた。

 履歴書を基に仕事の棚卸しをしても希望職種を絞ることはできなかった。そこでMは、Oさんの夢を聞いてみた。すると、Oさんは教育系の仕事に携わりたいとのこと。履歴書に塾に関する職歴は見当たらなかった。掘り下げて質問すると、かつてそうした職を求めたが、機会がなかったのだと話した。

 塾の管理者の求人票を提示したところ、Oさんは俄然やる気を出し応募。見事採用された。

 支援が終了して1年余り経過。事務所にOさんがひょっこりと現れた。来月、離れた支店の塾長に就任することが決定。引越しをする前にあいさつに来たと言う。

 雇われの身とはいえ、若い頃の夢を叶えたことになる。やりたい仕事に就くサポートをするのが、就労支援員の仕事。当たり前の仕事をしただけであるが、Mはとてもうれしかった。