【第17話】定着支援も就労支援の仕事

Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で13年目。今まで400人以上の人の就労支援に携わっている。
Nさんは、63歳のときにMが勤務するセンターを訪れた。60歳で定年。退職金が残り少なくなり、生活に不安を感じていた。年金は厚生年金部分が支給されていたが、それでは生活ができない。仕事をして生活を安定させたいという相談であった。
Nさんは定年を迎えるまで、2社の製造会社に勤務。その経歴にこだわることなく、何でもしますと言う。
Mは、Nさんが自己破産をしていないこと、前科がないことを確認。60代でも比較的安易に就職ができる交通誘導警備員の仕事を勧めた。
Nさんは1社目の面接を受けた警備会社に採用された。しかし、その後の定着支援が本当の支援になった。交通誘導の現場は、班単位で仕事をする。先輩である班長に気に入られないと仕事をまわしてもらえないことが多い。
2か月が過ぎた頃には、週4日もらえていた仕事が、週3日、週2日と減少。不安になったNさんから、週に何回も愚痴の電話を受けるようになった。
仕事がない日に来所。警備以外の仕事を希望され、倉庫内作業の仕事に数社応募したが、採用されなかった。
そうこうしている間に幸運が訪れた。車通勤が可能なNさんは少し遠方になるが、一人で勤務ができる現場に転勤。週5日勤務ができることになり、収入は安定。65歳になり、満額の年金を受け取ることができるようになった。
Nさんは、仕事を辞めた。悠々自適の生活とまでいかないが、安定した生活を送れるようになった。
気がつけば、Nさんとの支援は2年近くになっていた。仕事を辞めずに継続を支える支援も就労支援の仕事。何よりもNさんのコツコツと仕事を続ける姿勢に救われた支援であった。


