【第14話】就職氷河期世代、Hさんの就職活動

Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で13年目。今まで400人以上の人の就労支援に携わっている。
Hさんは40代半ばの女性。中学時代からアニメのキャラクターに興味があり、独学でデザインを勉強。弟からは「お姉ちゃんならプロになれる」と言われたものの、そこまでの自信は持てない。IT関連の専門学校を卒業。氷河期世代のせいか、正社員の経験はない。派遣社員としてDTPオペレーターの実力は積んできた。
就職相談のはずが、どういうわけか、インターネットの診断では自分は発達障害に該当すると主張。発達障害者かもしれないので、障害年金をもらえる可能性があると持論を訴えた。
確かにHさんには多動性は認められた。Mが求人情報を提示するまでもなく、複数の企業に応募。面接まで受けていることがよくあった。
HさんはDTPオペレーターとして即戦力があり、アルバイト・契約社員の待遇では採用されるが、1か月ももたずに人間関係が上手くいかない、私をいじめる人がいると言い退職。Mのセンターでは2か月程度の定着支援はする。終わりそうで、なかなか終わらない支援であった。
Hさんには、本人が主張するように発達障害の特性の多動性が強く、弱い自閉症があるようにMは感じていたので、精神科の受診を勧めると、精神科医に恐怖心があり受診はできないと強めに反論。理由を聞くと、20代の頃に通院したことがある。処方された薬は効かなかったし、かえって体調を崩す。そのことを主治医に伝えても服用を命じられた。だから怖くなり、通院を止めたと言う。
2年振りに来所したHさんは以前と同じくパワフル。ECサイトに興味を示し、3か月間悪戦苦闘したが、見事にECサイトの運営管理者の職を得た。
Mがした支援は、Hさんの話に傾聴し、その逞しさにエールを送ることであった。
