Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で15年目。今まで450人以上の人の就労支援に携わっている。

 Vさんは、フーテンの寅さんのような人。江戸っ子気質ではないが、いつも調子がいい。突然、窓口に現れる。担当の50代のSさんを訪ね、休んでいると伝えると、「今日は産休ですか」と冗談まじりの挨拶をする。頼みもしないのにスマホに保存されている、贔屓のキャバ嬢の写真を見せてくれる。さしたる支援もしていないMのことを「先生、先生」と親しそうに話しかけてくる。憎めないキャラの持ち主。 

 もし寅さんが実在していたら、ギャンブル好きで、少額とはいえ、借金があり、取り立て屋から追いかけまわされているとMは勝手に思っている。

 先日ハローワークに同行しているさなか、取り立て屋から返済の催促がスマホに入った。

 Vさんは、「今は役所にいるので話せません」と返答。相手もさることながら、「30秒だけ時間をください」と言い、強引に一方的に話す。その場に居合わせた職員・Mはそのやり取りを聞かされてしまった。

 内容はVさんのあわてんぼうの人柄をよく表していた。4月分の請求書を3月分と勘違いして支払ってしまった。返済者はもちろん3月分も返済してくれと言う。Vさんは来月の年金が入るまで待ってくれと返答。

 Vさんの年齢は70歳。とても元気なおじさんで情け深い。亡くなった兄の息子の借金まで肩代わりをしている有様。

 そんなVさんは、5年前にMのところに現れた。4件目の面接で食品工場に就職。70歳を期に退職勧奨。就労中も時折、事務所を訪れ、嬉しそうに多くの中国人のお嬢様と和気あいあいとパックねぎをこしらえていると話していた。   今までもこれからも、きっと収入以上に支出の多い生活を送るであろうVさん。年齢を考えると容易い就労支援にならないだろうが、幾多の苦難を乗り切って生き抜いてきたVさんの運命の強さに期待する支援になりそうだと微笑むと同時に肝を据えるMであった。