【第2話】「共感的理解」

Mはカール・ロジャーズ先生を尊敬している。今回はMが実感しているM流の「共感的理解」ついて話す。

Mは、1日2名、多いときは4名の就労支援を希望する人と面談。面談者の中には、就労を希望するのは建前だけ。本当は就労をしたくない人が多数いる。

就労支援への抵抗と思われる症状を訴える。体中に赤い発疹ができる。目の中にヘルペスまでできた人もいた。他の症状として肩より上に手が上がらない。耳鳴りが治まらない等々。今まで400人以上の就労支援をしてきたが、これらの身体的症状を訴えた人は、症状の重い軽いはあるが、二桁はいる。信じられないかもしれないが、自転車には乗れるのに30mも歩けないと真顔で言う人も数人いる。

皆一様に訴えることがある。もし、就職面接を受け、採用されても、雇用主に迷惑をかける。だから、就職活動はできないと。Mは、通院をするように提案。本当は精神科を受診してほしいが、先ずは整形外科・耳鼻科を勧める。しかし、素直に受診はしてくれないケースが多い。

面談は月2回を設定。上記の理由で外出ができない。だから、来られないと電話があればいい方で、無断で休むことも珍しくない。そんな人たちとの支援は数か月で終わることはない。年単位でかかることもある。Mの最高記録は就職して経済的に自立するまでに6年を要した人もいた。

そんな人との支援は、就労しなければならない課題を互いに認識している関係性を取りつつ、就労したくない気持ちを公平に損得抜きに理解していることが伝わると、身体的症状は嘘のように消えていく。何とも不思議な経験をMはしている。Mにとっては当たり前のことになっているが。そんな関係ができるまでには、身体の話に終わらず、その人の生い立ち、趣味、生き甲斐等々について聴く。ときには涙を流す人もいる。その人の人生そのものを理解しようとする姿勢。これがM流の「共感的理解」である。

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