【第4話】職業訓練/介護関係
Mの就労支援の仕事の中に職業訓練の紹介がある。今まで数十人の相談者が職業訓練を受講。
今回は介護関係の資格が取得できる職業訓練を受講した相談者の話。
彼は高校を卒業後実家の家業を手伝う。父が死去。実家は廃業。母と生活保護を受給。Mの就労支援につながる。30歳の彼は実家の手伝い以外の仕事に就いたことがない。家業を継ぐのに必要な資格は取得せず、車の免許も取得していなかった。実家の廃業後は自宅に引きこもり母と二人で暮らしていた。
希望職種は港等の貨物のクレーン操縦士。Mは、彼の夢を叶えることは難しいと丁寧に説明。勧めたのは毎月開催される介護関係の職業訓練。
彼は受講する決心はついたが、ハローワークの職業訓練の窓口に申込む段階で躊躇を繰り返した。Mとの月1回の面談では来月必ず申込むと約束。しかし、次の面談でもまだ申込めていない。Mが諦めかけた3か月後にようやく申込んだ。彼は申込用紙を3回書いたことになる。
そんな彼であるが、職業訓練はとても楽しかったようだ。訓練終了後に就職。しかし、早期に退職し、直ぐに再就職をした。
Mには彼とのやり取りで、10年以上経っている今でも鮮明で色褪せない光景がある。ハローワークで求人検索をしている彼を見かけ、声をかけた。また、退職し、就活を始めたのかと思い、話しかけると、彼は職業訓練の同級生の就職先を探してあげていると力強く答えた。その日の彼は面談室で見せていた弱々しいうつむき加減の彼とは別人のように輝いていた。
職業訓練の効用は計り知れないものがある。Mの経験では相談者のほとんどが最後まで受講。昼夜逆転の生活を送っていた相談者さえも。
彼は少々出来過ぎであるが、コミュニケーション力が向上。人前でしっかりと話せるようになっていた。引きこもりの人に是非ともチャレンジしてほしいのが職業訓練である。