【第6話】職業訓練/体験編

Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で13年目。今まで400人以上の人の就労支援に携わっている。

Mは15年ぐらい前に職業訓練の講師を4~5年間経験。担当の講義は就職活動。今回はそのことについて。

Mは就職活動には4つのこころが必要と説いた。第一「折れない心」、第二「自分を信じる心」、第三に「他を思いやることができるゆとりの心」、第四に「楽天的な心」。具体的な講義の内容は個人ワーク・ペアワーク・グループワーク。職業訓練の受講生は10代~50代の男女。Mは講座の初日の1時間目に登壇。役割は受講生同士が仲良くなり、共に励まし合いながら、就職活動ができるクラスのムードを作ること。

自己紹介は自分がするのではなく他己紹介。隣に座っている人からインタビューを受け、その人が自分に代わって紹介をする。まずは隣人に興味を示すことから始め、グループワークでは、5人~7人のグループに分け、じっくり意見交換ができる場を提供。ゲームの最後に各メンバーの「いいとこ探し」をし、メモ形式でプレゼントのように交換し合う。個人ワークは作文が中心。一例を挙げる。小学校・中学校の思い出を書く。その時の自分から今の自分に送る手紙を書き、発表で締めくくる。

Mの記憶に強烈に残っている光景がある。Kさんは19歳の女性。おばあちゃん子だった。小学校の頃のおばあちゃんとの思い出を書いた。おばあちゃんが先日死去。手紙を発表してくれたKさんは、大粒の涙をながし、激しく号泣。肝心の内容までは分からなかったが、優しかったおばあちゃんへの感謝の気持ちでいっぱいなことはとてもとても伝わってきた。

発表後の教室は神聖で清々しい空気に包まれていた。きっとKさんは就職活動に必要な心、第五「感謝の心」まで備わっている人だと思う。これは就職活動の講師の願いである。