「新しい事例検討法 PCAGIP入門 パーソン・センタード・アプローチの視点から」(村山正治・中田行重 著)

事例検討会(ケース・カンファレンス)は医療・福祉・カウンセリングなど様々な領域で行われている。従来の事例検討会はともすれば、事例に対する見立て、スキル、態度などに焦点が集中し、事例提供者への批判につながりがちであった。そこで、事例検討会は事例提供者の成長を促す機会であるはずという新たな視点から提唱されたのがPCAGIP方式である。観察者を置かず、参加者全員が事例検討に質問者という形で参加し、あらかじめ決めておいた記録者以外はメモを取ってはならず、事例提供者を含め他者への批判をしないというというルールがユニーク。事例提供者・参加者全員の話す場としての安全性を確保し、事例検討に集中できるというメリットがある。このやり方では結論は出なくてよく、質問の積み重ねによる気づきからヒントが出れば十分という考え方を取る。自分も実際、福祉職場やキャリアコンサルタントの事例検討会で実践してみたことがある。結論は出ないが、他の参加者のものの見方・考え方にインスパイアされて、たいへん充実感があった。カール・ロジャーズのパーソン・センタード・アプローチによる個人カウンセリングの基本思想は「答えは相談者の中にある」で、PCAGIP方式はそれをグループワークに展開したもので、「答えは事例提供者の中にある」と捉えられる。