【第13話】就職から独立に必要なものとは?

Mの紹介/とある中核市の社会福祉事務所の就労支援員。今年で13年目。今まで400人以上の人の就労支援に携わっている。
Gさんは離婚調停中の母子家庭の母。小学校6年生(長男)と4年生(長女)がいて、実家に戻り両親と同居。長男が中学校に進学をするまでに以前住んでいた校区に引越しをして両親から独立したいという希望をもっていた。Gさんは美術系の専門学校を卒業後、アパレルメーカーの直営店の販売職に就いた。そこで別居中の夫と知り合い結婚。2児が授かり現在に至る。希望職は一般事務職。経験がないまま30代後半のGさんは応募するも書類選考を通過することさえ苦戦。稀に面接までこぎつけても採用にならなかった。
一般事務職を諦め、スポーツジムのインストラクターに就いたが、環境に適応できず早期に退職。次に住宅展示場の受付事務に就くも長続きはしなかった。実家暮らしなので食費は親任せ、子どもの塾代を稼ぐためにクリーニング店の受付のアルバイトをしていた。すぐに生活ができない経済状況にはなかった。そこでMはGさんにスキルを身につけることを提案。介護職を勧めたがGさんはその気にならなかった。いろいろな話をする中でGさんの学生時代の夢は漫画家。少女コミックの新人賞に入選した経験まであるが、今はストーリーが沸かない。ならば、アプリなどを作成することを提案。残念ながらPCスキルが伴っていなかった。
一念発起してPCの教室に半年間通うことを選択。見事スキルを獲得。職務経歴書に記載できるまでになった。Gさんは、小規模の企業であるが、キャラクターグッズのデザインから製作まで手掛ける企業にデザイナーとして採用された。
長男が中学校入学までに就職する希望は叶わなかったものの、その後、親子水入らずで暮らし始めたと報告を受けた次第である。就職から独立するまでの決め手は、必要なスキルの獲得のみならず、Gさんの頑張り屋さんの気性と自分が納得できる仕事に就きたいという力強い意志だとMは思う。
